アメリカ転勤:ビザ取得の話

このエントリーにはITエンジニアの仕事をしている専門学校卒の人がアメリカ就労ビザ取得において体験したよもやま話が書いてあります。


アメリカ人以外がアメリカで働くには就労ビザが必要で、ビザ取得までの道のりには人それぞれのドラマがあるっぽい。私の時もいろいろトラブって大変だった。今から思えば、以下のような私の経歴がビザ取得トラブルに大きく影響したんだと思う。

  • 大卒でなく専門学校卒であること
  • 暗号やマルウェアなどサイバーセキュリティに関連する職歴があること

アメリカの就労ビザは数種類あって、IT系の人はたいていH1BかL1ビザというやつが多い。選べるパターンはあまりないと思うけど、それぞれいろいろ特徴がある。

  • H1Bはいわゆる専門職ビザで、4年制大学卒以上の学位が必要かつアメリカで就く職業がその学位に関連している必要がある。配偶者は働けない。
  • L1はいわゆる駐在員ビザで、学位は問われないがアメリカで就く職業は"Specialized Knowledge"を要するものである必要がある。配偶者も働ける。

ビザについては検索すれば山ほど資料が出てくるけど、これから渡米を考えているIT系の人におすすめなのはTech系PodcastのRebuild.fm ep.130とそのAfter Showです。ビザの種類や渡米して働いている人がどんなビザを得ているのかについて話を聞くことができます。OSSに貢献している人はOビザを取れることがあるらしい。すげー!

私は幸運にも、配偶者も働くことができるL1ビザを取得できることになった。手続きは下記の流れで進んでいく。

1. アメリカで弁護士がビザ申請書類作成
2. Fedexで書類束が日本に送られてくる
3. 日本のアメリカ大使館で面接&パスポート提出
4. ビザが貼られたパスポートを受け取る

普通は1か月くらいですべて終わるらしい。私も手続きを進めていたんだけど、普通とは違うっぽいことが次々に起こって結局手続き開始からビザ受け取りまで3か月半かかった。

1. バックグラウンドチェックが通らなかった

アメリカ転勤とビザ申請にあたって、犯罪歴、学歴のバックグラウンドチェックというものを受けた。アメリカの調査会社からメールが来て、そのフォームに個人情報を入力すると犯罪歴や学歴が調査される。調査の承諾に際しては読み切れないほどの文章が提示される。結果は自分にも送ってもらえる。その中で、私の卒業した専門学校へのコンタクトはうまくいかなかったみたいで、学歴のバックグラウンドなしというビックリ状態でのビザ申請になった。このせいで通常より2週間ほど余分にかかった。そしてこれがたぶん2と3の追加書類が必要になった背景になっていると思う。

2. 学歴を補足する追加資料の提出が必要だった

書類作成は会社が頼んだアメリカの弁護士が行ってくれる。私の場合は大卒でないということで、詳しい業務経歴書(英語)を弁護士に提出して、弁護士経由でどこかの大学教授に業務経歴書を確認してもらい「この人は大卒の学位を持っている人と同じぐらいの"Specialized Knowledge"を持っていますよ」という書類を追加で作成してもらった。このとき、外資系企業への転職に使うようなA4サイズ1枚程度のいわゆるResumeをまず提出したら、それでは足りないのでもっと詳しく書いてくれと言われ、日本語で作っていたA4サイズ5ページの業務経歴書を外資系企業への転職用書類を専門にやっている翻訳業者に出してA4サイズ4ページにまとめてもらった。自腹で5万円かかった。辛かったけど急に言われてもささっとできるほど英語が堪能でなかったし、英語圏の人が見やすい形にまとめてくれたので良かったのかなと思っている。ちなみに翻訳業者の人にも「こんなにたくさん書いても彼らたぶん読みませんよ」と言われたけど、ビザ申請のための書類なので細かめにお願いしますと言って通常料金でやってもらった。その節はありがとうございました。仕上がりには満足しています。なおこの追加書類は手続き上定められて必要なものではなく、念のためのものらしい。このせいで通常より3週間ほど追加の時間がかかった。

3. 職歴を証明するために前職の在籍証明が必要だった

これもバックグラウンドチェックがうまくいかなかったことが影響しているように思う。私の場合は現職のアメリカ支社への転籍で、現職が3年、前職が9年半という職歴だったため、前職の在籍を示す証明を出してもらって念のため持っていけという指示を弁護士から受けた。これを準備するのにまた数日かかった。前職の人は慣れているのか、電話したら次の日にはさっさと送ってくれた。なお実際の大使館面接では使用しなかった。

4. アメリカから送られてきた書類に不備があり、印刷しなおした

この時点で通常よりもかなり余分な時間を使って準備して、やっとの思いでアメリカから大使館面接に持っていく書類の束が送られてきた。しかしながら書類の一部に不備があったようで、そっちで印刷しなおしてくれと言う。ハイハイと思って差替用のPDFをプリントしてみたら、紙のサイズが合わない。弁護士が送ってくれた書類はアメリカにありがちのレターサイズで、日本のA4より縦が短くて横が長い。試行錯誤の末、キンコーズの窓口で頼んでレターサイズに印刷してもらった。300円ぐらいかかったが、この方法がいいように思う。

5. 東京大使館の面接が9日待ち+ビザ発送が面接後6営業日待ち

もうこの時点で心がボロボロだったのをよく覚えている。仕事の都合もあったのでこんなに待てないよな~と思い、大阪の領事館で面接を受けることにした。大阪は面接1日待ち+ビザ発送も面接後1日待ちのはずだった。面接の申し込み(DS-160)も入力項目が多くてミスを誘ってくる。このころ私はもう精魂出尽くして出がらしのようになっており、申し込みは共にビザ申請する夫がやってくれた。大感謝。

6. 領事館面接で書類不備が発覚する

面接までの準備でも1ステップずつきれいに躓いたので、面接もきっとうまくいくはずないと思っていた。面接会場にたどり着けないとかそういうのがあると思っていた。大阪には前日入りして、すっごい大雨で、なんとなく不吉な予兆を感じていた。当日はなんとか晴れ、ドキドキしながら領事館の受付へ。開口一番に「あなたの書類、申請する滞在期間のEnd of Dateが昨日になってますよ」と言われ、世界の終わりを感じた。ぎゃふん!ダメ押しだ。弁護士が作ってアメリカから送られてきた書類にミスなんてあるはずがないと思い込み、確認が必要だとは全く思っていなかった。エンジニアにあるまじきミス。この仕事向いてないのかな?そのほか、書類の並び順が変だとかで小言を言われる。しかし面接が受けられないかと思いきや、受けられるらしい。書類は訂正して後日郵送で再提出せよとのこと。なお、この書類はアメリカの勤務先が作成する書類なのでこの場であなたが修正することはできないと言われた。

面接待ちで並んでいる間、個人事業主らしき人がNGを食らっていてすごくビビりつつ面接を受けた。面接自体は滞りなく進んだ。面接官が「自分は問題ないが、このコンピュータが追加の審査が必要だと言っている。これにはだいたい2週間ぐらいかかる」というようなことを、面接終わりの時に言ったと思う。通常、書類不備などでNGの人は221(g)という紙をもらうらしいのだが、私はこの紙を渡されなかった。面接後すぐ、Eメールで大使館の受付の人から書類(I-129S)を訂正して送ってくださいという短い連絡が来た。こちらの弁護士に連絡し、書類を再度作成して日本に送ってもらった(不備があったページには関係者のサインが必要であったため、アメリカで再作成する必要があった)。再提出まで1週間以上かかった。宣告された2週間がものすごく長く思えた。

7. 「Administrative Processing」に引っかかる

大阪の領事館で面接を受けると「Consular Electronic Application Center」でビザ申請のステータスを確認することができる(東京だとこのシステムはなぜか使えないみたい)。面接後は「Administrative Processing」になっていた。これが面接官の言った「追加の審査が必要だ」というやつらしい。調べてみるとたまに引っかかる人がいるみたい。引っかかる理由は教えてもらえない。推察するに、エンジニアリングの仕事についている人は別途アメリカが定める「Technical Alert List」というものに軍事利用とかの関連で職歴が引っかかるとこのプロセスに入ることがあるらしい。PKIに関連する仕事を長くやっていたこと、直近の職歴がマルウェア関連のアナリストだったことが理由なのかなと、今となっては思う。でもセキュリティ関係の仕事をしている同業者の間でもビザ申請に引っかかった話なんて聞いたことないよ。もし似た事例をご存知でしたらこっそり教えてください。

「Administrative Processing」になった人は世界各国にいて、みんな祈る気持ちで待っているのは同じだった。同じ状況になった人のブログとかすごいめっちゃ読んだ。個人ごとに事情が違うので参考にはならないけど、私の場合は6/13に手続き開始、8/30に面接、9/26にステータスが無事にIssuedになり、9/28にレターパックでビザを受け取った。手続き開始から実に3か月半、特に面接からの1か月は生きた心地がしなかった。毎日CEACのサイトを何度もチェックして、Issuedになったとき、パスポートを受け取ったときはめっちゃくちゃうれしかった。うれしすぎてFacebookにポエムを書いたりした。


まとめます。

今後渡米を希望していたりビザ申請したりする人がトラブルを避けるために事前に準備できることは:

1. 専門学校卒の人は大学卒の学位をとっておけ!

放送大学などに入学して卒業してもいいだろうし、どこかの大学の科目履修生になって追加の単位を32単位ほど取って、大学評価・学位授与機構に申請して試験を受けると学士の学位を認定してもらえます。私は放送大学で16単位ぐらい取って挫折してしまった。情けない。

(追記)放送大学に入学して卒業すると得られるのは教養学部の学位で、ITの仕事には就けないかもしれないので取り消す。追加で単位を取って大学評価・学位授与機構に申請するほうが、かかる時間も少ないし、学士(工学)がもらえるし、良いと思う。

2. 英語のResumeはあらかじめ準備しておくに越したことはない

手続きが始まるとバタバタしてよく練られた英語の業務経歴書を準備するのは大変だと思う。渡米が決まっていなくても、希望するなら時間を作ってあらかじめ準備しておくのが吉。損にはならないし。

3. 提出書類は弁護士作成のものも含め必ず内容をチェックする

特に日付とかそういう凡ミスで躓くのは本当に馬鹿らしいので、絶対確認しよう。私、次から絶対確認する。

ビザ申請について検索すると拒否された事例もたくさん出てくるので、手続き中はとってもナーバスになってしまう。このエントリーは躓いても無事にビザが発行された事例として読んでもらえたらいいなと思います。